水道関係用語集
(出典:日本水道協会発行「水道用語辞典」より 同義語(=◯◯)については企業団で追記)
水道関係用語集の目次
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あ行
- 異臭味原因物質(いしゅうみげんいんぶっしつ) =異臭味
水道水の臭味(臭気及び味)が異常な場合の原因となる物質を指すが、異臭味の原因となる物質は複雑多岐にわたり、特定することは難しいことが多い。特に富栄養化した水源によるカビ臭の問題が注目されており、ジェオスミン、2-メチルイソボルネオールが臭気原因物質として確認されている。また、塩素処理をすると不快な臭気がでるフェノール類やアミン類もある。
- 一部事務組合(いちぶじむくみあい)※東総広域水道企業団はこれに該当します。
普通地方公共団体及び特別区が、その事務の一部を共同処理するために設ける地方公共団体の組合(自治法284条2項)。 この他に、市町村が相互に関連する事務を共同処理するために設ける複合的一部事務組合がある(同法285条)。 一部事務組合の設立は、関係地方公共団体が協議により規約(同法287条)を定め、総務大臣または知事の許可を得て設ける(同法284条2項)。 また、公益上必要がある場合に知事は市町村または特別区に対し、一部事務組合を設けるべきことを勧告することができる(同法285条の2第1項)。 一部事務組合の設立に伴い、当該組合が処理する事務は構成団体の権能から除外されるが、同組合の議会が行う重要な議決事件については、 あらかじめ各構成団体の長へ通知することが必要であり、その結果についても同様である(同法287条の3)。なお、地方公営企業の経営に関する 事務を共同処理する一部事務組合を企業団という(地公企法39条の2第1項)。参考:自治法292条。
- 渦巻ポンプ(うずまきぽんぷ)
遠心ポンプの一種。羽根車を回転させ、その遠心力を利用して揚水する。案内羽根がなく、中揚程、大流量に適し、水道事業で最も多く使用されているポンプである。
- 営業外収益(えいぎょうがいしゅうえき)
収益勘定の一つ。主たる営業活動以外の財務活動から生じる収入。収益勘定は、営業収益、営業外収益及び特別利益に区分されるが、営業収益と営業外収益を区分するのは、それが主たる営業活動を源泉としているか、それ以外の活動を源泉としているかという点である。預貯金・貸付金から生じる受取利息、有価証券の配当、損失補てん的な意味を持つ補助金、雑収益などがこれに当たる。
- 営業外費用(えいぎょうがいひよう)
費用勘定の一つ。主として、金融財務活動に要する費用及び事業の経常的活動以外の活動によって生じる費用。費用勘定は、営業費用、営業外費用及び特別損失に区分される。支払利息、企業債取扱諸費、繰延勘定償却及び雑支出がこれに当たる。
- 営業収益(えいぎょうしゅうえき)
収益勘定の一つ。主たる営業活動として行う財貨・サービスの提供の対価としての収入で、収益の中心的なものである。水道事業においては、給水収益、受託工事収益及びその他の営業収益に区分して記載することとなっている。
- 営業費用(えいぎょうひよう)
費用勘定の一つ。主たる事業活動に伴って生じる費用。水道事業においては、原水費、浄水費、配水費、給水費、受託工事費、業務費、総係費、減価償却費、資産減耗費及びその他営業費用に区分して記載することとなっている。
- 塩素剤(えんそざい) =次亜塩素酸ナトリウム
塩素剤の使用目的は酸化と消毒の二つである。塩素の酸化力を利用して、マンガンや鉄の酸化、アンモニア性窒素の分解などが行える。一方消毒剤としては、塩素の強い殺菌作用を利用、微生物や病原菌などを殺菌し、水の安全性を確保する。種類としては、塩素ガス、次亜塩素酸カルシウム(塩素ガスを石灰に吹き込んだもの)、次亜塩素酸ナトリウム(別名次亜塩素酸ソーダ。塩素ガスを水酸化ナトリウム溶液に吹き込んだもの)などがある。
- 遠方監視制御(えんぽうかんしせいぎょ)
遠方に設置された施設及び設備機器(テレメータ)を、制御所から遠方監視及び操作設備によって監視制御すること。遠隔監視制御あるいはテレメータ・テレコントロールとも呼ぶ。1カ所の制御所から複数の被制御所を管理することができるため、大幅な省力化と集中化を進める上で、今日では施設管理上欠かせない制御となっている。
- 横流式沈澱池(おうりゅうしきちんでんち) =横流式
主流が水平方向である沈澱池。池の形状・構造から長方形沈澱池、円形・方形沈澱池、傾斜板沈澱池などがある。
か行
- 片吸込渦巻ポンプ(かたすいこみうずまきぽんぷ)
遠心ポンプで、インペラの吐出側にケーシングをもち、この部分で速度エネルギーを圧力エネルギーに変換するポンプを渦巻ポンプといい、インペラの吸込口が片側だけにあるポンプを片吸込渦巻ポンプ、インペラの吸込口が両側にあるものを両吸込渦巻ポンプという。
- 活性炭(かっせいたん)
炭素系物質からなる吸着剤の一種で、比表面積が500~1,500m2/g、細孔半径1~100nm程度の広い表面積と微細孔からなる多孔性構造を持つ。骨、石炭(褐炭、瀝青炭など)、ヤシ殻、木材、石油ピッチ、石油コークスなどの炭素系物質を原料として炭化・賦活工程を経て製造される。活性炭はその形状から粉末活性炭と粒状活性炭に分類され、粒状活性炭は破砕炭と成型炭に分けられる。浄水の高度処理のほか、下水処理・屎尿処理の高度処理、精糖、醸造、石油精製などの幅広い分野で利用されている。
- 活性炭処理法(かっせいたんしょりほう) =活性炭処理
浄水処理において通常の凝集・沈澱・ろ過で除去できない溶解性の有機物を、活性炭を用いて吸着除去する方法を活性炭処理法、活性炭吸着法、吸着処理法などという。活性炭吸着は有機物の除去に極めて有効な方法で、異臭味物質、残留塩素、フェノール類などの処理に用いられるが、親水性の強い糖類やアルコールなどはほとんど除去できない。活性炭処理法はその方式から粉末活性炭処理と粒状活性炭処理に大別できる。
- 活性炭処理装置(かっせいたんしょりそうち) =活性炭注入設備
粉末活性炭処理の場合には吸着槽を設けるといったような特別な活性炭処理装置や、活性炭吸着装置は必要ないが、活性炭の注入機が主たる装置となる。活性炭はインジェクタまたはポンプで注入される。この他、貯蔵槽またはスラリー槽、計量装置などからなる。粒状活性炭処理の場合は吸着塔(または槽、池)が主たる吸着装置になる。これにはろ過池の場合と同様な活性炭層の逆洗装置が設けられる。この他、活性炭の移送・張り込みのための装置、老廃炭の排出などの設備からなる。
- 簡易水道(かんいすいどう)
簡易水道事業の用に供する水道をいい(水道法施行令3条2項)、計画給水人口が5,000人以下の水道である。
- 灌漑(かんがい)
耕作地に人工的に水を導いて農作物に供給すること。農作物の栽培に必要な水を灌漑用水といい、これを頭首工などの取水施設、ダムなどの貯留施設、灌漑用水路等を通じて農地へ供給する。わが国では水田を中心とした古い歴史があるため、灌漑用水は慣行水利権を有している場合が多い。また、農業に要する水は地域内で反復利用されること、期別によって取水量が大幅に違うことが特徴である。
- 監査委員(かんさいいん)
地方公共団体の財務に関する事務の執行、及び経営に係わる事業の管理を監査するために置かなくてはならない、地方公共団体の独任制の執行機関をいう(自治法195条~202条、地公企法39条の2第5項及び6項)。監査委員の選任については、普通地方公共団体では、長が議会の同意を得て、人格が高潔で、地方公共団体の財務管理その他行政運営に優れた識見を有する者及び議員のうちから選任する。また、企業団においては、企業長が企業団の議会の同意を得て、人格が高潔で、事業の経営管理に関し優れた識見を有する者のうちから選任する。監査には、例月出納検査(自治法235条の2第1項)、定例監査(同法199条4項)、決算審査(同法233条2項、地公企法30条2項)などがある。
- 管渠(かんきょ)
管水路と開水路を含む水路の総称。開水路は開渠、暗渠、トンネル等に分類される。まれに、管形式の開水路を管渠という場合がある。渠とは、本来、掘割、溝の意味。
- 管理者(かんりしゃ) =水道事業管理者
地方公営企業を経営する地方公共団体に、地方公営企業の業務を執行させるため、地公企法2条1項に規定する事業ごとに置かれ、その業務の執行に関し当該地方公共団体を代表する者をいい(同法7条、8条)、企業管理者ともいう。水道事業においては、「水道事業管理者」という。管理者は、分課の設置、企業職員の任免、企業管理規程の制定など、企業経営についての広汎な権限を有している(同法9条、10粂)。管理者は、原則として同法2粂1項の事業ごとに置かなければならないが、条例で定めるところにより、政令で定める地方公営企業については管理者を置かないことができ、又は2以上の事業を通じ管理者1人を置くことができる(同法7条、地公企令8条の2)。例えば、水道事業及び工業用水道事業を通じて置かれる管理者は、「公営企業管理者」等と称される。
- 企業債(きぎょうさい)
地方公営企業が行う建設、改良等に要する資金に充てるために起こす地方債(地公金法22条)。企業債発行の根拠は、自治法230条の「別に法律で定める場合」で、地財法5条1号「交通事業、ガス事業、水道事業その他地方公共団体の行う企業に要する経費」がそれにあたる。一般会計債との違いは、企業の建設、改良等に要する経費は許可されればすべて起債の対象となること、収益を生ずる施設投資のための起債であり、償還費は料金により回収されること、その償還費用は公債費負担比率の計算から除外されること、などがあげられる。
- 企業債償還金(きぎょうさいしょうかんきん)
企業債の発行後、各事業年度に支出する元金の償還額または一定期間に支出する元金償還金の総額をいい、地方公営企業の経理上、資本的支出として整理される。利息の償還額も含めて企業債償還金と総称することもある。上水道事業債の償還方法は、政府・公庫資金で用いられる元利均等償還(元金5年据置、30年または28年償還)、市場公募資金で用いられる元金均等償還(元金3年据置、10年償還、2回まで借換可能)が一般的である。銀行縁故資金などの場合は、通常、元金均等償還が用いられるが、資金引受先との協議により、満期一括償還などの償還方法をとることも可能である。
- 企業団(きぎょうだん)
地方公営企業の経営に関する事務を共同処理する一部事務組合をいう(地公企法39条の2第1項)。企業団は自治法上の一部事務組合であり、地公企法の全部適用を受ける地方公営企業を経営するものである。企業団については、同法において、管理者、監査委員、議会、財務に関する事項など一部事務組合に関する特例が設けられている(39条の2、39条の3)。
- 規則(きそく)
法形式の一部の名称であり、国の法律を補完するもの、国の機関が定めるもの、地方公共団体の長などが定めるもの(自治法15条、138条の4第2項)などがある。地方公共団体の長が定める規則は、条例とともに重要な自治法規であり、条例の委任を受け、または条例を執行するために定められるもの、条例と同じく住民の権利義務に関する法規たる性質を有するもの、地方公共団体の内部的規則たる性質を有するものがあり、条例と競合する場合には、条例が優先すると解されている。また、地方公共団体の長などが定める規則の形式的効力は、法律及び命令に劣るとされている。
- 基本計画(きほんけいかく)
各水道事業などが置かれた自然的、社会的条件のもとで、計画年次、今後取り組む事業内容の根幹に関する長期的な計画のことで、基本方針、基本事項などからなっている。基本設計ともいう。
- 基本水量(きほんすいりょう)
基本料金に付与される一定水量のこと。この水量の範囲内では実使用水量の多寡に関係なく、料金は定額となる。基本水量の設定は、一般家庭において一定の範囲内で水使用を促し、公衆衛生の水準を保つとともに、その部分に係わる料金の低廉化を図るもので、政策的配慮に基づくものである。ただし、平成10年7月に改訂された「水道料金算定要領」(日本水道協会作成)では、基本水量制は廃止された。
- 基本料金(きほんりょうきん)
二部料金制において、水道水の使用量と関係なく定額で徴収する料金部分のこと。使用量に応じて徴収する従量料金との合計額が水道料金となる。基本料金には、基本水量が付与される場合とされない場合、またすべての需要者について均一の場合と需要種別により格差が設けられる場合がある。「水道料金算定要領」(日本水道協会作成)では、基本料金は、各使用者が水使用の有無にかかわらず賦課される料金と定義し、個別原価計算基準として準備料金と一致するとしている。
- 給水(きゅうすい)
給水申込み者に対し、水道事業者が布設した配水管より直接分岐して、給水装置を通じて必要とする量の飲用に適する水を供給すること。
- 給水収益(きゅうすいしゅうえき)
水道事業会計における営業収益の一つで、公の施設としての水道施設の使用について徴収する使用料(自治法225条)をいう。水道事業収益のうち、最も重要な位置を占める収益である。通常、水道料金として収入となる収益がこれに当たる。
- 給水量(きゅうすいりょう)
給水区域内の一般の需要に応じて給水するため、水道事業者が定める事業計画上の給水量のこと(水道法3条12号)。統計などにおいては、給水区域に対して給水をした実績水量をいう。
- 給水量原単位(きゅうすいりょうげんたんい) =一日最大給水量、一日平均給水量
単位当りの給水量のこと。年間総給水量を年日数で除したものを一日平均給水量(m3/日)といい、これを給水人口で除したものを一人一日平均給水量(m3/人/日)という。年間の一日給水量のうち最大のものを一日最大給水量(m3/日)といい、これを給水人口で除したものを一人一日最大給水量(m3/人/日)という。また年間の時間給水量のうち、最大なものを時間最大給水量(m3/時)という。水需要予測では、各用途ごとの、一人一日(一件一日)当りの使用水量(m3/人・日)等を原単位として用いる。生活用(家事用)に使用される水量のことを、生活用原単位と称することもある。なお、一人一日当りのほかに、給水量を面積や生産額などの活動当りに換算したものも原単位と呼ばれる。
- 急速ろ過法(きゅうそくろかほう) =急速ろ過池
原水中の懸濁物質を化学薬品である凝集剤を用いてまず凝集沈澱処理し、残りの濁質を1日120~150mの速い速度の急速ろ過池でろ過し除去する方法。急速ろ過にはろ層の構成により単層ろ過と複層(多層)ろ過があり、単層のろ材として砂が用いられるものを急速砂ろ過という。急速砂ろ過によって得られる水は前段の処理の凝集沈澱の処理結果の成否に依存しているため、緩速ろ過法に比べ処理操作に特別の技術が必要となる。通常、急速ろ過池は、有効径0.45~0.7mmの砂を60~70cmの厚さに敷き込んだ急速砂ろ過池が主である。
- 凝集(ぎょうしゅう)
水中に含まれる微細なコロイド粒子が不安定化され、集塊し、より大きな粒子となること。通常、浄水処理においては、不安定化のために硫酸アルミニウム、PACなどの薬品を添加して凝集を行う。これを薬品凝集という。凝集においては、成長した粒子の径は数μm以下であり、粒子相互の会合のエネルギーはブラウン運動によって与えられる。この後、攪拌などで生じた乱流変動により強力な衝突合一の機会が与えられ、重力沈降可能な集塊粒子が形成されるが、これをフロック形成といい、一般的には凝集と区別される。しかし、包括的に上記の凝集とフロック形成を合わせて凝集という場合もある。
- 凝集剤(ぎょうしゅうざい)
水中の微細なコロイド粒子の荷電を中和し、双方を橋渡しする作用をもつ薬品。一般には、水中で容易に加水分解を起こし、正荷電の金属水酸化物のコロイドを生じて、濁質コロイドの荷電を中和するアルミニウム、鉄など金属塩類が用いられる。水道では硫酸バンドとも呼ばれる水道用硫酸アルミニウム(液体及び固体)、PAC(パック)とも呼ばれる水道用ポリ塩化アルミニウムが用いられ、主に海水淡水化の前処理には塩化第2鉄が用いられている。アクリルアミド系高分子凝集剤は厚生省の通知により禁止されていたが、水道施設の技術的基準を定める省令により一定の制限つきながら使用できるようになった。凝集効果を高めるため、pH調整剤(酸剤、アルカリ剤)及び凝集補助剤を併用することもある。
- 業務の予定量(ぎょうむのよていりょう)
地方公営企業の各事業年度における経営活動の基本的目標を具体的に示したもので、予算に記載しなければならない(地公企法24条1項、地公企令17条1項1号・3項、地公企則12条・別表5号)。水道事業または工業用水道事業では、業務の予定量として給水戸数または給水事業所数、年間総給水量、一日平均給水量などを記載するほか、主要な建設改良事業の概要を記載することとされている(同表注1)。
- 許可(きょか)
一般的な制限・禁止を特定の場合に解除し、適法に一定の行為をすることができるようにする行政行為。法令上、認可、免許などの語が混用されている。許可を受けないでした行為は、当然に処罰の対象となるが、その効力は無効にはならない。許可は、一定の権利または権利能力を付与する「特許」や第三者の行為を補充してその法律上の効力を完成させる「認可」とは異なる。水道事業者または水道用水供給事業者は、給水開始後においてその事業を休止し、または廃止しようとするときは、厚生労働大臣の許可を必要とする(水道法11条、31条)。
- 空間速度(くうかんそくど)
連続流通系反応装置における流体原料の処理能率を表す指標として用い、時間の逆数の次元をもつ。上水道においては粒状活性炭槽を通過する1時間当りの処理水量を粒状活性炭の容量で除した値で表され、1時間に粒状活性炭量(m3)の何倍の水量を流すかという通過水量〔(m3/h)/(m3)〕を意味する。SVともいう。
空間速度(/h)=処理水量(m3/h)/活性炭の容量(m3)
活性炭による異臭味除去の場合、通常、SV5~10/hで用いられることが多い。SVがあまり大きいと活性炭の再生頻度が多く、運転費が高くなり、小さいと大きな設備となり建設費が高くなる。
- クリプトスポリジウム(くりぷとすぽりじうむ)
原生動物(寄生虫学では原虫類という)アピコンプレックス亜門胞子虫鋼真コクシジウム目クリプトスポリジウム科の唯一の属。腸管に感染して下痢を起こす病原微生物で、ヒトに感染するのはおもにCryptosporidium parvumである。水系感染することが認識されたのは1980年代になってからであるが、それ以降、汚染された水道水を原因とする大規模な集団感染をたびたび引き起こしている。宿主はヒト以外にもウシ、ヒツジ、イヌ、マウスなど広範囲のほ乳類に及ぶ。鳥類やは虫類を宿主とする種もある。栄養型の生物は宿主の細胞内にのみ見られ、宿主外ではオーシストとして存在する。クリプトスポリジウムのオーシストは球形で直径約5μmと小さく、4個のスポロゾイトを内包している。クリプトスポリジウムのオーシストは塩素に耐性があり、水道水の消毒程度の塩素濃度ではほとんど不活化されない。平成8年(1996)6月に埼玉県越生町で町営水道水が原因となった大規模な集団感染を引き起こしたことから、その対策の重要性が認識され、厚生省(現厚生労働省)は「水道におけるクリプトスポリジウム暫定対策指針」を全国に通知し、濁度0.1度以下でのろ過水管理などの対策を取ることを求めている。
- 計装設備(けいそうせつび)
生産工程を円滑に管理するために、監視制御を目的に計測機器及び制御設備を装備し、運転管理に関する情報を把握し、操作に反映させる設備である。また、監視と制御の設備だけでなく、情報を活用するための技術を含めたものをいう。
- 決算(けっさん)
事業活動の結果を明らかにすることを目的として、一定期間の損益の状態と、期末における財政の状態を表示すること。地方公営企業の決算について作成しなければならない書類は、決算報告書、損益計算書など財務諸表であり(地公企法30条7項)、管理者は毎事業年度終了後2月以内に決算の調製を行い、証書類、事業報告書及び地公企令23条で定めるその他の書類をあわせて地方公共団体の長に提出しなければならない(同法30条1項)。地方公共団体の長は、この決算その他の書類を監査委員の審査に付し(同条2項)た後、監査委員の意見を付けて、遅くとも当該事業年度終了後3月を経過した後最初に招集される定例会である議会の認定に付さなければならない(同条4項)。官公庁会計は予算中心主義であるが、公営企業会計においては企業の経済性の発揮(同法3条)という点から、予算だけでなく決算も同様に重視される。
- 減価償却費(げんかしょうきゃくひ)
固定資産の減価を費用として、その利用各年度に合理的かつ計画的に負担させる会計上の処理または手続きを減価償却といい、この処理または手続きによって、特定の年度の費用とされた固定資産の減価額を減価償却費という。減価償却費の経理は、減価償却の目的をどう見るかによって変わってくるが、一般的には、固定資産の価値減耗についての費用を種々の方法により各年度に適正に配分し、その損益に対応させて正しい損益計算を可能にするものであるということができる。
- 減債積立金(げんさいつみたてきん)
地公企法に定める法定積立金の一つ。企業債の償還に充てるために積み立て、他の用途には使用することができない(32条)。事業年度末日に企業債を有する地方公営企業は、前事業年度からの繰越欠損金を補てんした後の残額の20分の1を下らない金額(残額が20分の1に満たない場合は、その額)を、企業債の額に達するまで減債積立金として積み立てなければならない(地公企令24条)。減債積立金を使用して借入資本金である企業債を償還した場合には、その減債積立金に相当する金額を自己資本金に組み入れなければならない(同令25条)。
- 原水(げんすい)
浄水処理する前の水。水道原水には大別して地表水と地下水があり、地表水には河川水、湖沼水、貯水池水が、地下水には伏流水、井水などがある。
- 建設改良積立金(けんせつかいりょうつみたてきん)
地方公営企業における任意積立金の一つ。建設または改良工事等を行うための財源として充てる目的で利益に応じて積み立てる積立金で、議会の議決を経て積み立てる(地公企法32条2項、地公企令24条4項)。
- 建設改良費(けんせつかいりょうひ)
資本的支出として4条予算に計上される、固定資産の新規取得またはその価値の増加のために要する経費で、経営規模の拡充をはかるために要する諸施設の建設整備などのためのものである。具体的には、固定資産の購入、建設はもちろんのこと、増築・増設に要する経費である。ただし、修繕・維持に要する経費は建設改良費には含まれないから、収益的支出の区分基準(修繕費支弁基準)を策定しておくべきである。
- 鋼管(こうかん)
素材に鋼を用いていることから、強度、靭性に富み、延伸性も大きいため、大きな内・外圧に耐えることができる。また、溶接継手により連結されるため、管路の一体化が可能であり、継手部の抜け出し防止策が不要となるほか、軽量で加工性が良いなどの特徴がある。こうした反面さびやすいため、内外面に高度防食塗装を要することから、他の管路に比べ施工性に劣るなどの短所がある。
- 工事負担金(こうじふたんきん)
地方公営企業が開発行為者や他企業などから依頼を受けて、当該事業の施設工事を行う場合に、その工事に係わる負担として依頼者から収納する金銭的給付。水道事業においては、開発行為者からの依頼による配水管の新設や下水道など他企業の工事などに起因して必要となる配水管の位置変更、消火栓の設置などの工事に伴い収納している。
- 更新(こうしん)
老朽化した施設・設備の機能を回復させるため、取替あるいは再建設を行うこと。その対象により、施設更新、管路更新、設備更新と呼ばれる。これに対し、既存の施設・設備を生かして機能を回復することを更生という。
- 高度浄水処理(こうどじょうすいしょり)
通常の浄水処理では十分に対応できない臭気物質、トリハロメタン前駆物質、色度、アンモニア性窒素、陰イオン界面活性剤などの処理を目的として、通常の浄水処理に追加して導入する処理のこと。代表的な高度浄水処理の方法としては、オゾン処理法、活性炭処理法、生物処理法及びエアレーションがあり、処理対象物質などによってこれらの処理方法が単独またはいくつかの組み合わせで用いられる。高度処理ともいう。
- 国庫補助(こっこほじょ) =国庫補助金
国は、その施策を行うにあたり特別の必要があると認めるとき、または地方公共団体の財政上特別の必要があると認めるときに限り、当該地方公共団体に対して補助金を交付することができる(地財法16条)とされる。これを国庫補助金と称するが水道行政に係わる国庫補助は、これに負担金、利子補給、その他反対給付を受けない給付金を含めた広義のものを指す。その交付根拠が法律に基づくか否かによって、法律補助と予算補助に区分される。いずれも補助金等適正化法に基づいて執行される。
さ行
- 財政計画(ざいせいけいかく) =財政収支計画
予算統制や投資計画決定などの内部管理や外部報告、あるいはサービス提供の対価の決定などの諸目的のために策定されるもので、業務運営上必要な全部または一部の支出と、この支出をまかなうための財源との対応関係について金額を表示した計画。財政計画は、策定目的の相違により、いくつかに類別できる。まず、計画期間の相違により、長期計画、中期計画及び短期計画の三つに、次にその内容の相違により、総合計画と水道施設拡張計画のような個別計画の二つに、さらに基本計画と業務計画の二つに類別される。
- ジェオスミン(じぇおすみん)
Streptomyces griseusなど放線菌またはAnabaena macrosporaやAnabaena sporpodesなどの藍藻類によって産生される。異臭味物質として知られ、カビ臭を呈する。粉末活性炭処理の場合と粒状活性炭等恒久施設の場合の快適水質項目としての目標値がそれぞれ定められている。測定法には、パージトラップ-GC-MS法、固相抽出-GC-MS法、ヘッドスペース-GC-MS法がある。
- 自家発電設備(じかはつでんせつび)
電力会社から供給を受ける電力とは別に、事業所内で必要な電力を自前で賄うための発電設備。非常用と常用があり、使用機関は主にディーゼルとガスタービンである。非常用は、電力会社からの電源供給が途絶えた時や、受変電設備の故障時などの非常用電源として、照明、換気、消火設備、通信設備及び監視制御設備等への最小保安電力を確保するために設置する。常用設備は、発電所における電力発生源のように常時運転されるものをいう。なお、非常用と常用とでは設置届出などの法規が異なるため、導入の際には留意が必要である。
- 資産(しさん)
企業が有する財貨及び権利で、固定資産、流動資産及び繰延勘定に区分される(地公企令14条)。資産は、将来の収益を生み出すための費用の前払的性格を有していると考えられており、企業が一会計期間を通して支出したものの中において、その期の費用とはされずに、企業内に留保された経済価値として認識される。資産勘定は、その増減及び異動並びに現在高を明らかにするものとされている(同令16条3項)。そして、貸借対照表上の借方に整理される資産は、将来の収益獲得のために役立つ価値を有しており、貸方の資本及び負債は資産の取得の源泉を表している。
- 自然流下方式(しぜんりゅうかほうしき) =自然流下
位置エネルギーを利用して水を流下させる方式。ポンプ圧送方式に対する用語である。自然流下方式には開水路(開渠と暗渠)を用いる無圧流下方法と、管路による有圧流下方法とがある。
- 支払利息(しはらいりそく)
営業外費用の一つで、企業債、他会計からの借入金、一時借入金等について支払う利息をいう。利息は、借入れの事実が存在する期間の経過に従って発生するものであるから、発生の原因である事実の存した期間によって、その額を割り振るものである。ただし、毎年度の支払利息の額がほぼ平均している場合には、実際に利息の支払を行った額をその年度の費用として経理することができる。
- 資本的収入及び支出(しほんてきしゅうにゅうおよびししゅつ) =資本的収支
収益的収入及び支出に属さない収入・支出のうち現金の収支を伴うもので、主として建設改良及び企業債に関する収入及び支出である。収益的収支とともに予算事項の一つである「予定収入及び予定支出の金額」を構成する(地公企令17条1項・2項)。資本的収入には企業債、出資金、国庫補助金などを計上し、資本的支出には建設改良費、企業債償還金などを計上する。資本的収入が支出に対して不足する場合には、損益勘定留保資金などの補てん財源で補てんするものとされている。
- 収益的収入及び支出(しゅうえきてきしゅうにゅうおよびししゅつ) =収益的収支
企業の経常的経営活動に伴って発生する収入とこれに対応する支出をいう。資本的収入及び支出とともに、予算事項の一つである「予定収入及び予定支出の金額」を構成する(地公企令17条1項・2項)。収益的収入には給水サービスの提供の対価である料金などの給水収益のほか、土地物件収益、受取利息などを計上し、収益的支出には給水サービスに必要な人件費、物件費、支払利息などを計上する。発生主義に基づいて計上されるため、収益的支出には減価償却費などのように現金支出を伴わない費用も含まれる。
- 修繕費(しゅうぜんひ)
営業費用の一部をなす。有形固定資産、たな卸資産などの維持修繕に要する費用である。
- 取水(しゅすい)
地表水、河川水、湖沼水及びダム水、地下水から適切な取水施設を使い原水を取り入れること。取水量の大小、設置地点の状況、水質、利水の状況などを考慮して取水地点を選定する必要がある。なお、取水施設選定には、計画取水量を安定して取水できる地点と規模を考慮すること。取水施設には、河川、湖沼などでは取水堰、取水門、取水塔、取水枠、取水管渠があり、地下水では浅井戸、深井戸、集水埋渠がある。
- 取水口(しゅすいこう)
原水を管または水路などにより取り入れる入口で、その位置を取水地点といい、取水するためにそこに設置される施設を取水施設という。取水施設は、計画取水量が安定して取水でき、取水口に土砂が流入したり、堆積したりしない構造とし、維持管理に支障をきたさないように配慮する必要がある。なお、取水口の位置は水利使用の許可内容となっている。
- 取水施設(しゅすいしせつ)
原水を取り入れるための施設総体をいう。河川水や湖沼水などの地表水の取水施設としては、取水堰、取水門、取水塔、取水枠、取水管渠があり、地下水や伏流水の取水施設としては、浅井戸、深井戸、集水埋渠がある。取水施設の設置にあたっては水質が良好であって計画取水量(計画一日最大給水量を基準とし、その他必要に応じた水量を加算)が年間を通じて確実に取水できる地点、規模、取水方法、維持管理などを考慮して施設の計画をすることが必要である。
- 受水費(じゅすいひ)
営業費用の一部をなす。他の地方公共団体などから供給を受ける原水、水道用水などの受水に要する費用である。
- 出資(しゅっし) =出資金
地方公共団体が、一般会計または他の特別会計から地方公営企業の特別会計に資本を出捐することをいう。 出資には、経費の負担区分に基づく義務的なもの(地公企法17条の2第1項)と地方公共団体の任意に基づくもの(同法18条1項)とがある。なお、任意による出資を受けた地方公営企業は、経営の状況に応じて納付金を一般会計等に納付するものとされている(同条2項)。
- 受電設備(じゅでんせつび) =受変電設備
電力会社などから特別高圧または高圧で電気を受電する設備。必要とする電圧に変電したうえ各施設へ電気を供給する部分まで含めていう場合が多く、受変電設備ともいう。受電設備は、受電系、変圧器系及び二次母線系に分割でき、遮断器、断路器、変圧器及び保護継電器などで構成される。受電方式には、1回線受電、常用予備2回線受電、平行2回線受電、ループ受電及びスポットネットワーク受電の方式がある。水道施設においては、各施設の重要度にも関係するが、2回線受電で2バンク以上の単一母線方式が多く採用されている。
- 浄水(じょうすい)
河川、湖沼、地下水などから取水した原水は、種々の物質、生物、細菌などが含まれているので、そのままでは飲用に適さない。これらの水中に含まれている物質などを取り除き、飲料用に供するための適切な処理を行い、水道法に定められた水質基準に適合させる操作をいう。また、この処理操作を浄水処理といい、それを行う場所を浄水場という。またこのような操作を受けた水も浄水という。
- 浄水施設(じょうすいしせつ)
水源から送られた原水を飲用に適するように処理する施設。一般的に、凝集、沈澱、ろ過、消毒などの処理を行う施設をいう。浄水処理の方式は水源の種類によって異なるが、(1)塩素消毒のみの方式、(2)緩速ろ過方式、(3)急速ろ過方式、(4)高度浄水処理を含む方式、(5)その他の処理、の方式のうち、適切なものを選定し処理する。
- 浄水場(じょうすいじょう)
浄水処理に必要な設備がある施設。原水水質により浄水方法が異なるが、一般に浄水場内の施設として、着水井、凝集池、沈澱池、ろ過池、薬品注入設備、消毒設備、浄水池、排水処理施設、管理室などがある。
- 浄水場排水処理施設(じょうすいじょうはいすいしょりしせつ) =排水処理施設
浄水処理工程から排出される沈澱スラッジやろ過池の洗浄排水を、濃縮、脱水、乾燥などにより処理する施設を排水処理施設といい、浄水場で行われるものを浄水場排水処理施設という。処理方式には、主に天日乾燥方式、石灰添加加圧脱水方式、無薬注加圧脱水方式、造粒脱水方式、凍結融解方式がある。
- 浄水処理(じょうすいしょり)
水道水としての水質を得るため、原水水質の状況に応じて水を浄化すること。固液分離プロセスと消毒プロセスとを組合わせたものが中心となっている。通常の浄水処理を行っても浄水水質の管理目標に適合しない場合は、活性炭処理法、オゾン処理法、生物処理法などの高度浄水処理プロセスを組合わせて行う。
- 浄水池(じょうすいち)
浄水場内において、浄水処理の運転管理上生じるろ過水量と送水量との間の不均衡を緩和するとともに、事故時または水質異常時における水量変動の対応などのために浄水を貯留する池。浄水施設としては最終段階の施設であり、また浄水を貯える重要な施設であるため、覆蓋し、水密性かつ耐震性をもった構造とする必要がある。容量は計画浄水量の1時間分以上を標準とする。
- 使用水量(しようすいりょう)
各需要者が使用した水量で、水の供給の対価である水道料金を算定する基礎となる。使用水量は水道メータにより計量されるが、水道メータの異常、漏水その他の理由により使用水量が不明な場合は、過去の使用実績あるいは一定の根拠に基づいて算出した水量をもって認定し、決定される。これを使用水量の認定といい、この水量を認定水量という。
- 条例(じょうれい)
地方公共団体が自治立法権に基づいて制定する法の一形式。地方公共団体は、法令に違反しない限りにおいて、地方公共団体の事務に関し、条例を制定することができる。義務を課し、または権利を制限するには、法令に特別の定めがあるものを除くほか、条例で規定しなければならない(自治法14条1項、2項)。条例には法令に特別の定めがあるものを除くほか、違反した者に対して2年以内の懲役、100万円以下の罰金等、または5万円以下の過料を科する旨の規定を設けることができる(同条3項)。条例の制定及び改廃は、議会の議決により成立する(同法96条1項1号)のを原則とするが、長の専決処分が認められる場合(同法179条1項)もある。条例は、公布することにより、その効力を生じる(同法16条3項)。
- 水源(すいげん)
一般に取水する地点の水をいうが、河川最上流部やダム湖などその水の源となる地点の水を指す場合がある。水源の種類には、河川表流水、湖沼水、ダム水、地下水、湧水、伏流水がある。水道用水源は、現在及び将来についても計画取水量を常時確保できる等量的に安定していること、水質が水道用として供するにふさわしい良好なものであること、の二つの条件を満足することが望ましい。
- 水酸化ナトリウム(すいさんかなとりうむ) =苛性ソーダ
一般にNaOHで表される。分子量40、密度2.13、白色半透明の固体。潮解性が強く、水に溶解するとき発熱する。その水溶液は強アルカリ性である。カセイ(苛性)ソーダともいう。凝集処理などで、アルカリ剤としてソーダ灰(炭酸ナトリウム)と同じように使用する。
- 水質基準(すいしつきじゅん)
水を利用し、供給し、または排出する際に、標準とすべき基準。個々の目的に応じて基準内容は様々であり、また、基準の形式及び制定主体もいろいろである。主な法的基準としては、水道法(水道水)、下水道法(公共下水道への排除及び下水道終末処理放流水)、廃棄物処理法(し尿処理放流水)、水質汚濁防止法(特定施設排出水)、環境基本法(水質環境基準)などがある。
- 水質計器(すいしつけいき)
水源の水質変動や水処理工程・送配水管網での水質監視と、浄水処理過程における薬品注入(凝集剤、アルカリ剤、消毒剤等)の制御に用する連続測定用の計器。薬品注入制御用には、濁度計・pH計・残留塩素計などがあり、上記以外には、水温計・溶存酸素計・電気伝導率計・アルカリ度計・油膜検知器・油分モニタ・UV計・ORP計・塩素要求量計・塩素イオン計・溶存オゾン計・アンモニア性窒素計・高感度濁度計などがあり、制御・監視目的としてプラントによって組合わせて使用される。
- 水質検査(すいしつけんさ)
配水池水や給水栓水のような浄水について水質試験を行い、その結果を水質基準項目ごとの基準値や塩素消毒の基準に照らして適合しているかどうかを判定することをいう。その他の場合、例えば浄水でも基準適否の判定をしない場合、原水または浄水処理工程中の水、あるいは漏水など浄水以外の試料水の場合は水質試験という。水道では、水道法施行規則及び通知により、定期及び臨時の水質検査の項目、頻度、採水場所等が定められているが、必要に応じて水質検査・試験を行い、水源の水質監視、浄水処理工程の水質管理、送・配・給水施設における水質管理を行うことが重要である。
- 水質事故(すいしつじこ)
何らかの原因により、油、化学物質、微生物などが川や湖沼に流れ込む突発的な事故をいう。水道にとっては、異臭味や最悪の場合は健康被害といった水質障害を引き起こす恐れがある。水質事故への対応としては、取水、浄水における非常用体制の整備を図るとともに、可能であれば、原水調整池を設けて、非常の場合でも断水を避けることができるようにすることが望ましい。
- 水道施設(すいどうしせつ)
水道のための取水施設、貯水施設、導水施設、浄水施設、送水施設及び配水施設であって、当該水道事業者、水道用水供給事業者又は専用水道の設置者の管理に属するものをいう(水道法3条8項)。水道のための施設であっても、水道事業者が管理権を有しないものは水道施設ではない。また、他の用途との共用のものであっても、その管理権を水道事業者が有する場合は水道施設であって、必ずしも所有権を必要とせず、管理権を有すれば足りる。
- 水道事業者(すいどうじぎょうしゃ)
水道法6条1項の規定による厚生労働大臣の認可を受けて水道事業を経営する者をいい(同法3条5項)、慣用的に水道事業体ともいう。水道事業は、原則として市町村が経営するものとされている(市町村営原則主義、同法6条2項)。
- 水道週間(すいどうしゅうかん)
国民に「水の大切さ」についての認識と「水道」及び「水道事業」への理解と協力を得るために、厚生労働省、都道府県、市町村、並びに水道事業体の主催、日本水道協会、全国簡易水道協議会の協賛により、毎年6月1日から7日まで中央行事のほか各地で諸行事が開催される全国的な水道の広報週間である。開催期日については、第1回が昭和34年(1959)7月25日から31日まで、第2回から第5回までは6月の第1週、第6回以降は現行のとおりとなっている。また、名称も当初は「水道週間」、第3回から第10回までは「全国水道週間」、第11回以降は再び「水道週間」となっている。
- 水道水(すいどうすい)
水道法3条1項に定める水道から供給する水。水道水は、人の飲用に適する水でなければならない。このことから、水道水が備えなければならない水質上の要件が同法4条に定められ、その要件に係る基準の具体的事項については、水質基準に関する省令(平成4年厚生省令69号)で定められている。
- 水道用水(すいどうようすい)
水道法に規定された水道施設により供給される、人の飲用に適する水のこと。また水道用水供給事業者から水道事業者に供給される水。
- 水道用水供給事業(すいどうようすいきょうきゅうじぎょう)
水道事業が一般の需要者に水を供給する事業であるのに対して、水道により、水道事業者にその用水を供給する事業をいう。ただし、水道事業者または専用水道の設置者が他の水道事業者に分水する場合を除く(水道法3条4項)。すなわち、水道用水供給事業は水道水の卸売業である。水道用水供給事業は、広域水道の一形態であり、全国で数多く設けられ、府県営と企業団営とがある。
- 水利権(すいりけん)
水を使用する権利のこと。具体的には、特定の企業者、公共団体、一定地域内の住民、耕地や森林の所有者が、独占排他的に継続して、河川水のような公水を引用し得る権利のこと。河川法(第23条)では、河川の流水を占用しようとする者は、河川管理者の許可(水利使用許可)を受けなければならないとされている。水利権は、いくつかの観点から次のように分類される。
(1)成立の由来による分類(許可水利権、慣行水利権)。
(2)使用目的による分類(水道用水利権、灌漑用水利権、水力発電用水利権など)。
(3)権利の安定性による分類(安定水利権、不安定水利権、暫定水利権、暫定豊水水利権)。
また、すでに獲得している水利権のことを既得水利権という。
- 生活用水(せいかつようすい)
使用水量を用途別に分類したものの一つで、原則として一般家庭で使用される水のことをいうが、(1)家庭専用(一般住宅、共同住宅、共用栓)のものと、(2)家庭兼営業用(店舗付住宅など)のものに区分される。生活用水の将来推計は、時系列傾向分析、回帰分析、要因別分析、使用目的別分析などの推計方法から、適切なものを選択組み合わせて行う。
- 線速度(せんそくど)
空筒(塔)速度→空間速度、ろ過速度
- 送水(そうすい)
浄水場で、処理された浄水を配水池などまで、管路などによって送ること。
- 送水施設(そうすいしせつ)
浄水場から配水池までに浄水を送る施設をいい、調整池、送水ポンプ、送水管、送水トンネル及びその付帯施設である。
- 損益勘定留保資金(そんえきかんじょうりゅうほしきん)
資本的収支の補てん財源の一つで、当年度損益勘定留保資金と、過年度損益勘定留保資金に区分される。当年度損益勘定留保資金とは、当年度収益的収支における現金の支出を必要としない費用、具体的には減価償却費、繰延勘定償却、資産減耗費(現金支出を伴う除却費を除いたもの)などの計上により企業内部に留保される資金をいう。ただし、当該年度に欠損金が見込まれる場合は、これに相当する額を控除した範囲内でしか補てん財源として使用できない。過年度損益勘定留保資金とは、前年度以前に発生した損益勘定留保資金であるが、当年度の補てん財源として使用できる額は、過年度に使用した額を控除した残額である。
た行
- 濁度(だくど)
水の濁りの程度。精製水1l中に標準カオリン1mgを含むときの濁りに相当するものを1度(または1mg/l)としている。水道において、原水濁度は浄水処理に大きな影響を与え、浄水管理上の最も重要な指標の一つである。また、給水栓中の濁りは、給・配水施設や管の異常を示すものとして重要である。
- 脱水(だっすい)
浄水場の浄水処理工程で発生するスラッジを処分の容易な状態にするために、スラッジの水分を減少させること。脱水の方法には、機械脱水法による場合と、自然エネルギーによる場合とがある。
- 多目的ダム(たもくてきだむ)
ダムには洪水調節、利水補給、発電などの目的があるが、これらのうち二つ以上の目的をもつダムのこと。多目的ダムの貯水池を多目的貯水池といい、容量は一般に洪水調節容量、利水容量、発電容量など目的別に確保される。
- 地方公営企業(ちほうこうえいきぎょう)
地方公共団体が経営する企業のうち、水道事業(簡易水道事業を除く。)、工業用水道事業、軌道事業、自動車運送事業、鉄道事業、電気事業及びガス事業の7事業(これらに附帯する事業を含む。)を地方公営企業といい(地公企法2条1項)、同法の全部適用事業(法定事業)としている。なお、水道事業には水道用水供給事業を含み、下水道事業は含まない。地方公営企業は、経済性を発揮(経済性)するとともに、公共の福祉を増進(公共性)することを経営の基本原則とし(同法3条)、その経費は、原則として当該企業の経営に伴う収入をもって充てることとしている(同法17条の2第2項)。
- 地方公共団体(ちほうこうきょうだんたい)
国の領土の一部とその地域の住民を構成要素として、自治権に基づき、地域内の行政を行う公法人をいう。自治法上、地方公共団体には、普通地方公共団体(都道府県、市町村)及び特別地方公共団体(一部事務組合等)の2種類がある。(自治法1条の3)
- 着水井(ちゃくすいせい)
浄水場などへ流入する原水の水位動揺を安定させ、水位調節と流入量測定を行うために設ける池あるいはマス(桝)のこと。また、水質異常時の薬品の注入箇所、数系統からの原水受水、原水の分配などの機能をもつものもある。
- 鋳鉄管(ちゅうてつかん)
鉄、炭素(含有量2%以上)、ケイ素からなる鉄合金(鋳鉄)で作られた管。直管は遠心力製造法、異形管は砂型により製造される。1933年、銑鉄に10~20%の鋼を混入して強度を高め、管厚を薄くした鋳鉄管の規格が制定され、これを高級鋳鉄管と定めたことにより、それ以前の銑鉄のみの鋳造管を普通鋳鉄管とし、区別している。その後1959年に黒鉛を球状化し、より勒性の強いダクタイル鋳鉄管が規格、製造化されたことにより、現在はほとんど製造されていない。
- 貯水池(ちょすいち)
水を貯えておく人工の池のこと。ダムとも呼ばれる。上水道や灌漑用・水力発電用の水を河川・渓流などから取って渇水時の水不足を補充する目的で設ける。水道事業者が独自に建設する貯水池を水道専用貯水池、他の事業者が水道以外の用途も含めて建設する貯水池を多目的貯水池という。
- 沈砂池(ちんさち)
取水門、取水塔及び取水管渠などの取水施設により河川表流水を取水して、原水とともに流入した砂などを速やかに沈降除去するための施設。池内の流速(平均流速2~7cm/s)を一様ならしめ、偏流や逆流により沈降効率を低下させないために、一般に流入部と流出部をそれぞれ漸拡漸縮させた長方形の鉄筋コンクリート構造物である。通常2池以上設けられる。
- 沈澱(ちんでん)
水中の浮遊物を水との密度の差を利用して、重力によって固液の分離を行うこと。浄水処理をはじめ水処理における基本的な単位操作である。
- 沈澱池(ちんでんち)
水よりも重い粒子は、静水中やきわめて静かな流れの中では沈降して水と分離する。この原理を利用して、原水を静かに流れる広い池に流入させて原水中の粒子(懸濁物)を分離する池を、沈澱池または沈澱槽と呼ぶ。沈降分離槽、クラリファイアともいう。
- 投資(とうし)
一般的には、事業の必要上他の企業等に出資すること、及び余剰資金を有利に利殖する目的で有価証券を保有することなどをいい、長期投資(1年以上)と短期投資(1年未満)に分類される。地方公営企業では、長期投資の投資有価証券、出資金、長期貸付金、基金(基金設置条例による)などが貸借対照表上「投資」として固定資産に計上される。短期利殖を目的として投資信託受益証券などを一時的(1年未満)に保有する場合は、流動資産(有価証券)として計上される。
- 導水施設(どうすいしせつ) =導水管
水道施設のうち、取水施設を経た水を浄水場まで導く施設で、主要なものは、導水路(導水渠、導水管)、導水ポンプ、原水調整池などである。
- 動力費(どうりょくひ)
営業費用の一部をなす。動力費には、機械装置などの運転に必要な電力料及び燃料費などである。
- トリハロメタン(とりはろめたん)
メタン(CH4)の水素原子3個が、塩素、臭素、あるいはヨウ素に置換された有機ハロゲン化合物の総称。THMと略称される。これらのうち、クロロホルム、ブロモジクロロメタン、ジブロモクロロメタン、ブロモホルムの各濃度の合計を総トリハロメタン(TTHM)と呼ぶ。水道水中のトリハロメタンは、水道原水中に存在するフミン質などの有機物を前駆物質として、塩素処理によって生成する。なかでもクロロホルムは発癌物質であることが明らかとなっている。
な行
- 認可(にんか)
第三者の行為を公の機関の同意という形で補充することによってその法律上の効力を完成させること。認可は法律的行為の効力要件なので、認可を受けない行為は原則として無効である。ただし、実際の法令では必ずしもこのように厳密な用いられ方はされておらず、特許、許可などの用語と混用されている場合が多い。たとえば、水道法6条の厚生労働大臣の事業の「認可」は、行政法上の「特許」に該当するが、同法14条6項の地方公共団体以外の水道事業者の供給条件の変更認可は、行政法上の認可に該当する。
は行
- 排水池(はいすいち)
排水処理のシステムの一つ。固液分離の効率を良くするために急速ろ過池洗浄排水、緩速ろ過池の洗砂排水、ポンプなど機器用維持管理排水、濃縮槽、排泥池上澄水などは排水池に、沈澱池の排泥は排泥池に分担させている。このうち急速ろ過池の洗浄排水のための池を洗浄排水池と呼ぶ場合がある。急速ろ過池の洗浄排水は一般に多量の浄水を短時間に使用するため、濃度や質において排泥処理施設への負担を均一にする緩衝設備として排水池を設ける。上澄水は順次原水へ返送することにより水資源の有効化も図れる。排水池の容量は、急速ろ過池の1回の洗浄水量以上とし、ろ過継続時間と洗浄回数を考慮して、2池以上が望まれる。
- 配水池(はいすいち)
給水区域の需要量に応じて適切な配水を行うために、浄水を一時貯える池。配水池容量は、一定している配水池への流入量と時間変動する給水量との差を調整する容量、配水池より上流側の事故発生時にも給水を維持するための容量及び消火用水量を考慮し、一日最大給水量の12時間分を標準とする。構造は、水深3~6m、水密性、耐久性を有するもので、一般的には防水工を施した鉄筋コンクリート造のものが用いられる。外部からの汚染を防止するため覆蓋され、断熱のため地下または半地下式とする。設置場所は、管末での水頭損失を少なくするため給水区域の中央付近とし、適当な高所が得られれば自然流下方式で配水するのが理想的である。
- 配電設備(はいでんせつび)
受電設備から電気の供給を受けて各負荷設備に電気を供給するための施設。配電方式は、供給信頼度が低いが最も簡単で経済的である放射状配電、供給信頼度の高い予備線配電及びループ配電がある。水道施設においては、放射状配電と予備線配電の併用が多く採用されている。
- PAC(ぱっく) =ポリ塩化アルミニウム
1960年代、日本で開発された無機高分子凝集剤で、一般式は[Al2(OH)nCl6-n]mで表される。ポリ塩化アルミニウムの略称。水道では、品質はJIS K 1475-1978で規格化されている。アルミニウムをあらかじめ加水分解重合させたもので、硫酸アルミニウムと比較すると、適正凝集pH範囲、適正注入率の許容幅、高・低濁時の凝集効果、アルカリ消費量、フロックの沈降速度などの面で有利である。なお、アルミニウムモノマーとして存在しているのは硫酸アルミニウムではほぼ100%であるが、PACでは約25~45%(JIS規格の塩基度45~65の範囲)であり、残りが重合(ポリマー)アルミニウムとして存在している。凝集沈澱・ろ過後の処理水には、アルミニウムの一部が残留するが、適正な注入処理を行えば、残留するアルミニウムの量はごく微量である。
- pH調整(ぴ-えっちちょうせい)
凝集性など処理性の向上や処理後の適正pH範囲への修正などを目的としてpHを調整すること。pHを上げる目的でアルカリ剤を、下げる目的には酸剤(塩酸など)を用いる。通常pHは、凝集処理及び塩素処理の後、pHを5.8~8.6に調整される。特殊な目的としては、重金属のアルカリ凝析、硬水軟化のためにアルカリ剤を注入し、処理後に上昇したpHを下げるために酸剤が加えられることもある。
- 病原生物(びょうげんせいぶつ) =病原性微生物
宿主に寄生することによって、その個体に何らかの異常(疾病)を起こさせる生物。病原体ともいう。顕微鏡的な大きさのものは病原微生物とも称される。病原生物の寄生(感染)によって起こる疾病を感染症という。生物の種類によって病原ウイルス、病原(細)菌、寄生虫(原虫類、蠕虫類)などに区分される。病気を発現させる因子を病原生物が保有していても、侵入した生物量、侵入門戸、寄生部位などによっては必ずしも発症するとは限らず、また逆に、一般には病原性がないと考えられている生物でも侵入部位や寄生部位並びに侵入した生物量などによっては症状をもたらすことがある。このため病原生物と非病原生物の区別は必ずしも絶対的なものではない。
- 負荷率(ふかりつ)
一日最大給水量に対する一日平均給水量の割合を表すもので、次式により算出する。
この比率は水道事業の施設効率を判断する指標の一つであり、数値が大きいほど効率的であるとされている。水道事業のような季節的な需要変動がある事業については、給水需要のピーク時に合わせて施設を建設することとなるため、需要変動が大きいほど施設の効率は悪くなり、負荷率が小となる。このことから負荷率を大にすることが経営の一つの目標となる。水道施設の効率性については、施設利用率、最大稼働率と併せて判断する必要がある。
- 普通地方公共団体(ふつうちほうこうきょうだんたい)
地方公共団体のうち、都道府県及び市町村をいい、公法人である(自治法1条の3第2項、2条1項)。普通地方公共団体は、地域における事務及びその他の事務で法律またはこれに基づく政令により処理することとされるものを処理するものである(同法2条2項)。普通地方公共団体には議決機関としての議会を、また、執行機関として長のほか委員会及び委員を置くほか、執行機関を補助するために、補助機関として必要な職員を置く(同法89条、138条の4、139条、161条~175条他)。
- フロック形成池(ふろっくけいせいち)
沈澱処理の前処理としてフロック形成を行うための池。フロックを成長させるための緩速攪拌を行うために、フロキュレー夕などの機械を用いる方式と水流の損失水頭を攪拌エネルギーとして利用する迂流式などがある。設計においては、フロックを壊さないようできるだけ均一な攪拌を行うことや、沈澱池に入る前にフロックを沈積させないよう、池の形状を工夫する必要がある。
- 粉末活性炭(ふんまつかっせいたん)
粉末状の活性炭のこと。水道用の粉末活性炭は通常水蒸気賦活で製造され、粒径が75μm以下のものが多く用いられている。PACと略記されることが多い。粉末活性炭の規格はJIS K1470-1991粉末活性炭試験方法、JWWA K113-2001水道用粉末活性炭試験方法に定められている。
- 補助(ほじょ) =補助金
政府が一定の行政目的を達成するため、地方自治体などに一方的に財源を交付すること。その支出を補助金という。また、地公企法は、地方公共団体が災害の復旧その他特別の理由により必要のある場合に、一般会計または他の特別会計から地方公営企業会計に財政的な補助をすることができると規定している(17条の3)。地方公営企業の経費は、経費の負担区分に基づいて一般会計などが負担するものを除いては料金収入などで賄うべきものであるが、例外措置として、合理的根拠のある場合に限って認められるものである。
- ポンプ井(ぽんぷせい)
原水、浄水などをポンプで揚水するとき、揚水量の変動などによる不均衡を調整するために設置した貯水槽のこと。一般には、取水施設に用いるものを取水ポンプ井、送水施設に用いるものを送水ポンプ井などという。また、ポンプ据付け位置の直下またはその付近に、水流の乱れや空気の混入などを防止するためにポンプマス(桝)またはポンプピットを設置することが望ましく、十分な有効容量とすることが必要である。
ま行
- 水の日・水の週間(みずのひ・みずのしゅうかん)
水資源の有限性、水の貴重さ及び水資源開発の重要性について国民の関心を高め、理解を深めるため、毎年8月1日を「水の日」、この日から1週間を「水の週間」とすることが昭和52年(1977)閣議了解され、国土交通省の主唱により、全国で各種の広報行事が行われている。
- 無停電電源装置(むていでんでんげんそうち) =無停電電源設備
商用交流電源の停電や電圧などの変動が電気設備の機能や動作に重大な支障を生じないように、無停電で定電圧、定周波数の交流入力を負荷に供給する装置で、電子計算機、計装設備などの電源に用いられている。整流器、インバータ及び蓄電池で構成される。常時は商用交流入力を整流器及びインバータで交流に変換して負荷に電力を供給し、万一商用交流入力が停電した場合、蓄電池からの直流入力をインバータにより交流に逆転換して、負荷に電気を供給するものである。運転方式には、常時インバータ給電方式と常時商用給電方式がある。
- 2-メチルイソボルネオール(に-めちるいそぼるねおーる)
略称はMIBまたは2-MIB。放線菌または藍藻類によって産生され、異臭味物質として知られている。通常はカビ臭を呈するが土臭、墨汁臭となることもある。通常の凝集沈澱、急速ろ過施設で対応できない場合は粉末活性炭処理、粒状活性炭処理、もしくはオゾン処理等で除去する。
- 滅菌(めっきん)
対象とする物体に付着あるいは混入しているすべての微生物を、芽胞を含めて完全に死滅させるか、あるいは完全に取り除いてしまうこと。すなわち、微生物がまったく存在していない無菌の状態にする操作をいう。火炎滅菌、乾熱滅菌、高圧蒸気滅菌、蒸気滅菌、放射線滅菌、紫外線滅菌などの方法がある。なお気体や液体をメンブレンフィルターでろ過する方法はろ過滅菌と呼ばれていたが、この目的に通常用いるメンブレンの孔径ではウイルスのように残存する微生物があるため、現在はろ過除菌と称することが多い。
- モニタリング(もにたりんぐ) =監視
環境中の汚染物質を監視すること。モニタリングの目的は人間や環境への汚染曝露の監視、発生源からの汚染物質の監視、実施した対策の改善効果の把握等である。水道では、水源及び給水栓等の水質監視のために水質検査が定期的に行われている。モニタリングを実施するには、目的、測定項目、測定場所と回数、試料の採取方法と測定方法等モニタリング方法の検討が重要である。
や行
- 薬品混和池(やくひんこんわち)
凝集剤を注入した後に直ちに急速な攪拌を与えて凝集剤を原水中に均一に行き渡らせる必要があるが、そのための混和装置のことで、急速攪拌槽、急速攪拌池、急速混和池、あるいは単に混和池ともいう。凝集剤が原水と反応して濁質粒子の荷電を中和する、いわゆる水和反応は短時間(1分以内)に終了するので、混和池の滞留時間は短くてよい(1~5分)が、その間に多量の攪拌エネルギーを投入する必要がある。攪拌方式として、フラッシュミキサなどの機械攪拌方式と、水流を激しくぶつけ損失水頭を攪拌エネルギーに変える水流式がある。損失水頭が少なく、攪拌強度が自由に変えられる機械式が多く採用されている。米国などではインラインブレンダも用いられている。
- 薬品注入設備(やくひんちゅうにゅうせつび)
薬注設備ともいう。一般に供給タンク(薬品小出槽)、あるいはホッパ-供給装置、計量装置、溶解混合装置、注入配管、注入拡散装置などの各装置で構成されている。注入方式は湿式と乾式に大別されるが、使用する薬品の種類及び種々の条件を十分考慮して選定する必要がある。浄水処理で使用される薬品は凝集剤、アルカリ剤、凝集補助剤、消毒剤及び活性炭などがある。これらの薬品はその特性も異なるため、それぞれに適した注入設備が必要となる。したがって使用に際しては薬注ポンプ、薬品注入機及び薬注配管などの構造と材質についてよく検討しなければならない。
- 薬品沈澱池(やくひんちんでんち)
急速ろ過方式における沈澱処理において、凝集作用で成長したフロックを沈澱分離し、後続の急速ろ過池にかかる負担を軽減する目的で設置されるもので、緩速ろ過方式の普通沈澱池と区別される。凝集沈澱池ともいう。薬品沈澱池の種類はその構造から大きく多階層からなる矩形沈澱池、傾斜板をもつ傾斜板沈澱池などの横流式と高速凝集沈澱池の上向流式とに区分される。
- 薬品費(やくひんひ)
営業費用の一部をなす。原水の浄水処理、浄水の滅菌などに要する薬品の費用である。
- 有効水深(ゆうこうすいしん)
ろ過池中の砂面上の水深をいう。砂上水深ともいわれる。通常急速ろ過においては、1.0~1.5mとっている場合が多い。また越流を防ぐためにろ過池天端まで30cmの余裕高をとる。有効水深が大きいとろ層内において負水頭の発生が抑制されろ過速度を大きくすることやろ過継続時間を長くすることが可能となる。この他には、沈澱池などの水槽で汚泥の堆積のために用意した部分などを除いた有効に働く水深を指す。
- 有効容量(ゆうこうようりょう)
配水池などの総容量のうち実際に利用可能な容量をいい、具体的には高水位(HWL)と低水位(LWL)の間の容量をいう。
- 有収水量(ゆうしゅうすいりょう)
料金徴収の対象となった水量及び他会計等から収入のあった水量。料金水量、他水道事業への分水量、そのほか公園用水、公衆便所用水、消防用水などで、料金としては徴収しないが、他会計から維持管理費としての収入がある水量をいう。
- 有収率(ゆうしゅうりつ)
有収水量を給水量で除したもの(%)。
- 予算(よさん)
一定期間における収入支出の見積。地方公営企業の予算は一般会計と異なり、(1)歳出の規制に重点が置かれている一般会計の予算に対し、企業の効率的運営に重点が置かれている、(2)収入と支出に相互関連性がある、(3)比較的弾力性を有している、(4)予算とともに実績評価として決算が重視される、などの特質がある。管理者が作成した原案に基づいて長が調製し、議会の議決を経て成立する(地公企法8条1項1号・2号、24条1項・2項)。
ら行
- ライフライン(らいふらいん)
本来の命綱、生命線(頼みの綱)という意味から派生し、電気、ガス、水道など、市民生活に必要なものをネットワーク(ライン)により供給する施設または機能のこと。これらに通信や輸送を加える場合もある。昭和46年(1971)に米国ロサンゼルス市付近で発生したサンフェルナンド地震の後に災害対策分野で使用され始めた専門用語。わが国の水道分野では、昭和59年(1984)の生活環境審議会答申「高普及時代を迎えた水道行政の今後の方策について」において、これからの水道の目標の一つとしてライフラインの確保を挙げ、需要に対応した安定供給に加え、地震など災害時においても必要最小限の給水は確保する必要があるとしている。
- 藍藻類(らんそうるい)
細胞内に核及び色素体を持たず、植物の中で最も下等な藻類。有性生殖を行わないので細菌類とともに分裂生物ともいわれ、シアノバクテリア(cyanobacteria)(青緑色細菌または藍色細菌)と呼ばれることもある。プランクトンとして、また付着藻類としての分布は広く、温泉から土壌上まで生息している。近年、水源の富栄養化に伴い、水の華、アオコを形成するAnabaena、Microcystisや、カビ臭物質を産生するAnabaena、Phormidium、Oscillatoriaなどの繁殖が顕著になっている。有毒藻類として報告されている種類もある。
- 流域面積(りゅういきめんせき)
流域を水平面に投射した面積。わが国の主な水系の流域面積(単位km2)は、石狩川14,330、信濃川11,900、北上川10,150、木曽川9,100、利根川15,840、淀川8,240、荒川2,940、吉野川3,750、筑後川2,860。
- 粒状活性炭
粒状活性炭は破砕炭と、粘結剤を用いて球形や円筒形に形成した成型炭に分類できる。原料は石炭系、石油系、木炭系などのものがあり、水処理の活性炭は水蒸気賦活で製造され、粒径が0.5~2.5mm程度のものが多く用いられている。GACと略記されることが多い。
- 粒状活性炭処理
異臭味や原水の有機物汚染が長期間または常時問題となるような場合に粒状活性炭吸着塔(または吸着槽、吸着池)を設け、凝集・沈澱・濾過後に活性炭層に通水して有機物を除去する方式。濾過池と同様な形式の場合には活性炭濾過と呼ばれることもある。吸着塔は濾過池の前におかれたり、濾過池の砂を活性炭に置き換え懸濁質の抑留機能をもたせる場合もある。浄水の高度処理ではオゾン処理と組み合わせて用いられる場合も多い。粉末活性炭処理と異なり、使用済みの活性炭は回収されて再生利用される。吸着塔などの新たな施設が必要となるため、施設費が高くなる。運転方式から固定床、流動床、移動床方式に分類される。
- ろ過(ろか)
砂などのろ材によって構成される一定の厚さのろ層に水を通すことによって、水中の濁質などの不純物を取り除くこと。ろ過方法には急速ろ過法と緩速ろ過法がある。急速ろ過は、原水中の懸濁物質を薬品沈澱池であらかじめ凝集沈澱させてからろ過する方法で、濁質などの固形分をろ材への付着、ろ層によるふるい分け作用によって除去する。ろ速は120~150m/dが標準である。緩速ろ過は、濁質や細菌類、あるいは溶解性アンモニア性窒素、マンガン、臭気物質などを、砂層による物理的作用のほか、砂層表面に増殖する微生物群による酸化分解作用によって除去する方法である。ろ速は4~5m/dが標準である。
- ろ過池(ろかち)
粒状物を充填した層中に水を浸透通過させて懸濁物を除去する池。凝集剤を使用して物理・化学的作用で除濁する比較的ろ過速度の大きい急速ろ過池と、主に生物・化学的作用(生物ろ過膜及び内部の微生物で浄化する)を利用して浄化するろ過速度の小さい緩速ろ過池の2種類がある。
- ろ過面積(ろかめんせき)
ろ過池内におけるろ過に有効に機能するろ層の平面積のことで、具体的にはろ材層の表面積をいう。
- ロックフィルダム(ろっくふぃるだむ)
フィルダムの一種で、透水ゾーンにロック材を使用したダム。内部にコアとよばれる不透水ゾーンを設け、順次外側に半透水ゾーン、透水ゾーンを配している。堤体の大部分を占める透水ゾーンにロック材を使用しているため、上流側は水位急低下時に残留間隙水圧が生じることはなく、下流側は常にドライである。アースダム(均一型フィルダム)に比べ、透水ゾーン材料のせん断強度が大きいため、法面の勾配を急にすることが可能である。